はじめに
プラバートナンプー寺でのボランティアの日々は3年たった今も鮮明な記憶として残っています。時間の経過という意味では、私の人生の一部にしか過ぎないのに、何故これほどまでに拘泥するのだろう、と時々考えます。
最近になって少し分かりかけてきたことは、あの8ヶ月という時間は、私にとって学びの場であったということです。まるで舞台の上で繰り広げられるような凝縮した人間模様、その観客として、また当事者として過ごした日々はその色鮮やかさを少しも失わず今も記憶に蘇ります。一瞬一瞬、完璧なまでに‘人間’が見える場所でした。
ホスピスで見たのは、生物の根幹をなす原則、即ち「生」の帰結である「死」です。私が理想とするそこからの学びは、「死」に対して拒絶反応を起こすのではなく、それを事実として自分の精神に織り込み、緩やかに人生の他の要因と同化させることです。
その他にも、HIVウイルスの危険性を出来るだけ多くの人々に伝えることの重要性を痛感しました。私が一期一会で出会った人々の大半が30才以下の、普通であれば人生まだ半ばにも達していない人々でした。名もない彼らがHIV禍に襲われ、人知れずこの世を去った。その重い事実をしっかり受け止め、伝えていかねばと思っています。
現在、私はチェンマイ県に在住し、N県立病院でボランティアをしております。私が担当しているのは、児童養護施設の孤児や山岳民族の子どもたちで、親の付き添いがないまま入院生活をしている子どもたちです。中には母子感染でHIV禍に襲われた子どももいます。そこで私が最期を看取った子どもの90%がHIV感染者の孤児でした。
ホスピスの母親たちが日々語ってくれた子どものこと。心を残して逝ってしまった人々の顔が思い浮かびます。決して母親代わりにはなれないだろうけど、そんな人たちの代わりに側にいてあげようと思っています。
私の活動報告や雑感を記しているサイトがありますので、お読みいただけましたら光栄です。
小林実千子
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